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世界4大宝石に数えられているエメラルドは、その神秘的な深い緑色が、美しい海や目の色の形容に使われるほど、古代から魅惑的で幻想的な宝石として不動の人気を誇っています。そんなエメラルドのカットと言えば、ダイヤモンドのようなブリリアントカットを目にすることはほとんどなく、エメラルドカットと呼ばれる平らで側面が階段状のカットが主流です。そこには、エメラルドの原石が持つ特性を最大限に活かすべく、先人たちが生み出した秘策の理由がありました。エメラルドの魅力を最大限に引き出すカットの秘密をさぐってみましょう。
Contents
エメラルドにはエメラルドカットが主流の理由
宝石にはそれぞれの特徴を活かし欠点をカバーするためのカットスタイルというものがあります。エメラルドに多く施されるエメラルドカットは、トップに平らな四角の面があり、下に向かって階段状に裾広がりを見せるため「ステップカット」とも呼ばれています。このカットがエメラルドに多く使われるのは、エメラルドの原石の特性に起因する3つの理由があるからなのです。
https://fr.wikipedia.org/wiki/Fichier:%C3%89meraude_7.jpg
1.原石の形
エメラルドの原石は元々6角柱の形をしているため、6つの平らな測面を効率的にカットできる方法が考案されました。各側面をテーブルと呼ばれる平らなトップ部分としてカットすることで、複屈折のエメラルドの色合いが最も美しく見えるのです。
http://www.lapigems.com/Articles/Gemstone-Cutting.aspx
2.原石の弱点
エメラルドの天然原石そのものはモース硬度上では硬いのですが、内部に内包物と呼ばれる無数の傷があるため、結晶としてはもろく衝撃に弱いという弱点があります。そのため、石をアクセサリーの台座に取り付けるだけで割れることもあり、職人泣かせの石とも言われています。この脆弱さをカバーするため、傷つきやすい角の少ない4角型や角を削った8角型のエメラルドカットが好んで使われるようになったのです。
3.原石の屈折率
エメラルドにエメラルドカットが施されるもう一つの理由は、宝石の輝きに必要な屈折率がエメラルドは低い、という特性のためです。屈折率とは「光が宝石の内部で折れ曲がり、角度を変えて反射する仕組み」の確率の事です。エメラルドはこの率が低いため、ブリリアントカットのようにカット面を多くすることで煌めきを増すといった効果はなく、むしろエメラルド本来の深淵な緑色をより大きく印象的に見せるために工夫されたのがエメラルドカットなのです。
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エメラルドカットの歴史と魅力
エメラルドカットが誕生したのは20世紀ですが、そのカットの魅力が広く知れ渡るようになったのはダイヤモンドにエメラルドカットを多く使うようになってからです。ヨーロッパではダイヤモンドは魔除けに使われ、永遠の愛を誓う証として王妃に献上する習慣がありましたが、その際エメラルドカットが好んで使われました。このカットがダイヤ本来の持つ透明度を最大限に引き出し、魔除けや告白に効果覿面とみられたためです。
https://www.gemmius.com/it/les-pierres/emeraude/emeraude-bresil-2-71-carats-pans-coupes/
四角い並行した面がステップ状にカットされ、4隅の角を落としたエメラルドカットは単純な技巧に見えますが、素材の欠点を隠せないため、宝石そのものの魅力をダイレクトに表現できます。安定感のある落ち着きを醸し出すカットだからこそ、成熟した大人の女性にも人気があり、日本の伝統的な着物文化でも帯留めなどに愛用されているのです。
エメラルドに合うカットの種類
エメラルドに最適なエメラルドカットの魅力をご紹介してまいりましたが、他にも品質の異なるエメラルドに適したカットが幾つかあり、それぞれ原石の性質に応じて使い分けられています。
1.ステップカット
宝石の外周が正方形やその他の4角形に象られており、切子面が側面のガードルに対して平行に削られているものを指します。その形は以下の3種類に分けられます。
【エメラルドカット】
破損防止の為に角を削り取り8角形になったステップカットをエメラルドカットと呼びます。このカットがエメラルドのカットに頻繁に用いられたことに由来します。テーブル面が広いことから、宝石の透明度を引き立たせます。
https://www.diamondnexus.com/emerald-emerald-cut.html
【バゲットカット】
バゲットはフランス語でフランスパンのことですが、主にブリリアントカットの主役宝石の脇役として周辺に添えられることが多いカットです。
【スクエアカット】
角が削り取られておらず、アンティークジュエリーによく見られるデザインです。プリンセスカットと似ていますが、シンプルなトップが特徴です。
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2.ミックスカット
ブリリアントカットの視覚効果とステップカットのデザイン性を組み合わせた、両方の長所をいいとこ取りしたカットで、1960年代に初登場以降成功を収めています。その形状には以下の4種類があります。
【バリオンカット】
1971年に南アフリカのバジル・ウォーターメイヤー氏が考案したカットで、自分の名前バジルと妻のマリオンを掛け合わせて命名されています。側面部は研磨され8角形または4角形のデザインになります。
https://www.brucefrytourmaline.com/a-great-sea-foam-with-a-small-flaw-barion-cut-cushion/
【ラディアントカット】
バリオンカットの変形バージョンで、切子面は62面のバリオンカットより多い70面を擁します。
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【プリンセスカット】
近年大人気なのが1960年にイギリスのネイジーが考案したプリンセスカットです。人気の秘密は、他のミックスカットに比べ、宝石の輝きを引き立たせながら、カットによって原石が失われる割合が少ないという点にあります。
http://www.kingstonegems.com/fine-loose-coloured-gemstones/zambian-emerald-princess-cut-120004/
【フランダースカット】
角を削り落としたスクエアカットのアレンジバージョンです。
3.カボションカット
不透明な宝石やモース硬度7以下の硬度の低い宝石に対して多く用いられるカットで、底部を平らに上部を半球形に研磨することで、引っ掻き傷などを目立たなくするという効果があります。宝石表面に現れるスター効果やキャッツアイ効果など特殊効果を出すために、翡翠やサファイアなどにも用いられます。
まとめ
クレオパトラやシーザーも愛したエメラルド、その石言葉は「幸福・希望・安定」とされています。静かで透明感のある輝きを放つエメラルドカットでさらに魅惑的になったエメラルドは、愛を誓う宝石としても最適ではないでしょうか。婚約指輪のダイヤモンドなどでも、純粋な輝きをダイレクトに放つエメラルドカットが近年流行の兆しを見せています。和装にも洋装にもエレガントに調和するエメラルドカットのエメラルドを、装いのアクセントに飾ってみませんか?